ストーリーの構成 ドラクエのシステム分析

執筆 : 右弐  /  作成 : 2004.12.18  /   最終更新 : 2013.02.23

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はじめに

このページの分析は、「ある作品のストーリーが感動的だったか」という内容的な観点ではなく、「ある作品のストーリーはどのように構成されているのか」という構造的な観点で行われています。ストーリーに関するネタバレ情報は含まれません。

なお、このページは2004年のドラクエ8発売直後に公開したものです。以降のリメイク作品について書かれたものではないことに、ご注意ください。2013年2月時点でのリメイク作品については末尾に加筆しています。

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作品ごとの構成の差

分析の指針

まず、ゲーム(RPG)のストーリーを構成する要素を大きく分けると以下のようになる。

また、プレイキャラ絡みのエピソード(B)に関しては、主人公に関するものを中心に扱う作品(主人公中心型)と、仲間キャラを対等に扱う作品(キャラ並立型)とに分けることができる。

分析の結果

上記の指針に基づき、シリーズの各作品を評価すると、以下のようになりました。◎とか△は、(A)については「はっきりしているかしていないか」、(B)(C)については「多いか少ないか」をあらわしています。
この表が結論です。そして、読者の方もこの表の内容に同意してくれたらいいな、と思い、この後の部分を書いています。とういわけで、このページを読み終えたときに同意をいただけたら嬉しいです。

作品名 冒険の目的
(A)
エピソード
プレイキャラ絡み(B) 他人中心(C)
DQ1 × - ×
DQ2 キャラ並立型
DQ3 主人公中心型
DQ4 キャラ並立型
DQ5 主人公中心型
DQ6 キャラ並立型?
DQ7 ◎5個分
DQ8 キャラ並立型

では、各作品ごとに詳しく見ていきましょう。

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ドラクエ 1, 2, 3

作品名 冒険の目的
(A)
エピソード
プレイキャラ絡み(B) 他人中心(C)
DQ1 × - ×
DQ2 キャラ並立型
DQ3 主人公中心型

各作品について

DQ1では、竜王を倒しに行くという使命(A)が最初に明確に与えられる。この使命をプレーヤーが自分のこととして感じるかどうかですべてが決まるような気がする。エピソードと呼べるもの(B)(C)はほとんどないといってよい。

DQ2もDQ1と大体同じような感じで(A)が最初に与えられる。そしてエピソードと言えるものも出てきた。(B)はキャラ並立型で、仲間キャラを増やす過程でそれぞれのキャラにまつわるエピソードが展開される。(C)としては、途中訪れた村の問題を解決したり、魔物に殺された人々のエピソードが語られたりする。

DQ3も同じような感じ。(A)が最初に与えられる。DQ2との違いは(B)が主人公中心型であることで、勇者以外のキャラについて語られることは全くないが、その分、勇者とその父親にまつわるエピソードが展開される。(C)は、質的にも量的にもDQ2と大差はない。

まとめ

以上のように、DQ1~3は冒険の目的が明確という点でよく似ている。(A)が主導でストーリーを構成している。 個々のエピソード(B)(C)は少ないが、その代わりに、最初に魔王を倒しに行くという強烈な使命(A)を与えられることで、全体を貫くストーリーがはじめに提示される。あとは、この使命をプレーヤーが自分のことのように感じられるかどうかでストーリーを楽しめるかどうかが決まってくるのだと思われる。

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ドラクエ 4, 5

作品名 冒険の目的
(A)
エピソード
プレイキャラ絡み(B) 他人中心(C)
DQ4 キャラ並立型
DQ5 主人公中心型

各作品について

DQ4は、DQ3までとは革命的といえるほどに異なっている。個々のエピソードがものすごく増えた。章分けされたことによって(B)は完全にキャラ並立型となり、また、プレイキャラだけでなく、敵陣営に関するエピソードの量も多い。(B)に関してはシリーズ中で最も多いといえるかもしれない。 (C)も増えたが、(B)ほどは増えていない。 (A)に関しては、5章では明確になるが、それまではいまいち明確ではないこともある。

DQ5は、DQ4の流れを踏襲している。個々のエピソード(B)(C)が多く、(A)が冒険の後半でいまいち明確ではなくなる時期がある。DQ4との違いは、(B)が主人公中心型になっている点。

まとめ

このように、DQ4,5はプレイキャラを描写するエピソードが豊富という点で似ている。(B)が主導でストーリーを構成している。 (A)が不明確になることがあるが、(B)が多いので、冒険が進むにつれ、よりキャラに感情移入しやすくなる。あとは、キャラにまつわるエピソードを感情移入して楽しめるかどうかで、ストーリーを楽しめるかどうかが決まると思われる。

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ドラクエ 6, 7

作品名 冒険の目的
(A)
エピソード
プレイキャラ絡み(B) 他人中心(C)
DQ6 キャラ並立型?
DQ7 ◎5個分

各作品について

DQ6からは、突如として、プレイキャラに関係ない人間が織り成すエピソード(C)を増やす路線に一変された。 (A)は冒険中盤から不明確になり、世界各地をまわり(B)(C)をこなすことでストーリーを進めていく。 (B)の量はDQ4,DQ5よりも減り、どちらかというとキャラ並立型なので、主人公を含む一人ひとりのキャラクターについての描写は少ない。

DQ7もDQ6の方針を踏襲し、さらに(C)を大幅に増強。(A)は冒険序盤に一応与えられるが、具体性を欠いているので、ほとんど(C)をこなしてストーリーを進める。 (B)の量は、DQ6よりもさらに減っていて、主人公主体型なのかキャラ並立型なのかの判断も難しい。

まとめ

DQ6,7はプレイキャラに関係ない人間が織り成すエピソードが豊富という点で似ている。(C)が主導でストーリーを構成している。 (A)が弱いので目的に縛られている感覚がほとんどなく、大量の(C)を個別に楽しみやすくなっている。あとは、旅行感覚で各地での出来事を個別に楽しめるかどうかで、ストーリーを楽しめるかどうかが決まると思われる。

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ドラクエ 8

作品名 冒険の目的
(A)
エピソード
プレイキャラ絡み(B) 他人中心(C)
DQ8 キャラ並立型

作品について

DQ8では、(B)が多くなり、(C)はかなり減らされた。
それに加え、(A)が序盤から明確に与えられる。途中で、何を最終目標に冒険しているのか分からなくなることはない。

まとめ

DQ8は、冒険の目的が常に明確という点でDQ1~3に、プレイキャラを描写するエピソードが豊富という点でDQ4,5に似ている(A)(B)の両方がストーリーを構成している。 この2つに比して(C)は弱いので、プレイキャラを中心に考えながら冒険の目的を達成することに集中しやすくなっている。あとは、キャラにまつわるエピソードを感情移入して楽しめるかどうか、冒険の目的に妥当性を感じられるかどうかで、ストーリーを楽しめるかどうかが決まると思われる。

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おわりに

分析方針の意図

「ストーリーが感動や共感を誘うものだったか」といった観点での分析を避けたのには、2つの理由があります。ひとつはネタバレを避けるためです。そしてもうひとつは、ストーリーの構成そのものが各作品で大きく異なるのに、どれが感動や共感を呼ぶものかを分析し、比較することは難しいと考えたためです。

したがって、本ページではまずは構成そのものを分析しました。「感動や共感」という視点からみたストーリーの分析も、機会があれば書いてみたいと思ってます。

分析は以上ですが、筆者はどのようなストーリーの構成が好きで、どのドラクエがストーリー的に面白いと感じたのか「感想」も書いています。このページの分析に妥当性があると思った方は、感想編もお読みいただけるとうれしいです。
(2004.12.18)

リメイク作品に関して  追記 2013年2月 

この8年間でリメイク作品が発売されました。
ストーリーに関しては、どの作品も大幅な変更ということはないようで、すべてこのまま適用できるといえるでしょう。また、ドラクエ4などは追加ストーリーが加わって、より「キャラ並立型」になっており、さらに特徴を強めています。

追記の経緯   追記 2013年2月 

つい先日、ドラクエ7が3DSでリメイク発売されました。
良いタイミングと思い、このページを読み返しました。8年前に書いたものですが、私の現時点での考えもほぼ同じであったため、ページを整形し直し、また、表現的にも若干の修正を加え、引き続きの公開に耐えるよう手を入れました。
(2013.02.22)

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